2005-01-01から1年間の記事一覧

ラヴクラフトとカント

親近感をおぼえる物事の見方といえば,1920年代アメリカの怪奇小説家,H.P.ラヴクラフトのそれを思いだす.【一部の怪奇小説・幻想文学マニアからは崇拝的ともいえる評価を受けるとはいえ】その作品は文学とはほど遠い怪奇小説ないしSFといったもので,作品…

天使のための音楽

もし,天使のための音楽があったとして,彼らは,我々のようにそれを時間系列のうちに展開して聞く必要はないかもしれない.我々で言う〈一瞬〉で,すべての音楽は終了してしまうかもしれない.(黒崎政男『カント『純粋理性批判』入門』p.111) - 冒頭の一…

『純粋理性批判』入門

先日(id:somamiti:20051017)に引き続き『純粋理性批判』の入門書からのまとめ書き.

感性と悟性

感性と悟性についての引用など.

哲学原典資料集(KDRV)

「純粋理性批判」についてのまとめ.今度は『哲学原典資料集』(pp.141-150)を参考に. 「哲学マップ」では「カテゴリー」のみがア・プリオリな要素としてとりあげられていたようにおもう;「感性の形式」の要素がとりあげられていない【単に読み飛ばしたの…

ヒトガタについて

純粋理性批判のためのメモ(id:somamiti:20051013)を書きつつ考えていたことから.

カントの立場:超越論的哲学

▼超越論的哲学 ア・プリオリなカテゴリーがあってはじめて経験がなりたつ.そして,経験があってはじめて諸物は‘そこにある’(存在する)といえる.諸物,ひいては自然一般は経験によって可能になる.これは,物の存在を暗黙の前提とし,すでに存在するモノ…

目的,合理論と経験論に対して

▼カントの目的:合理論と経験論の調停,理性の批判 合理論と経験論の対立とは知性の位置づけに関する対立である.知性とは概念にもとづき推理・推論する能力である.合理論は知性を過大評価し,経験論は理性を過小評価する.カントは知性の濫用を抑制し,か…

背景

▼時代:カント(1724-1804,純粋理性批判第1版1781,第2版1787)の時代 = 18世紀末から19世紀にかけて.ヨーロッパでは政治システムの近代化がなされつつあった(例:1789年のフランス革命).その状況下において,個人の自由(生命・身体・私的財産の所有・…

KDRVマップ

純粋理性批判(KDRV)の見取り図.おもに「図解雑学哲学」と「哲学マップ」より.‘B--’としたのは関連内容が記載されている原書第2版のページ(岩波文庫版を参照).

追記:想起説の証明

『メノン』では想起説の実験的な証明がおこなわれる:

回 → 答

いえ,あなた,はじめて赤ちゃんの笑顔を見た母親の喜びっていうものは,罪びとが心の底からお祈りするのを天上からごらんになった神さまの喜びと,まったく同じことなんでして.(『白痴(上) (新潮文庫)』) id:somamiti:20051002での疏水さんのコメントに…

流出

(参考:「新プラトン主義」『岩波哲学・思想事典』,他)

表象

▽哲学(参考:「表象」『岩波哲学・思想事典』) 表象 Vorstellung は歴史的にさまざまな用語で表わされた. アリストテレスの『霊魂論』(デ・アニマ)での定義では「表象 phantasia」とは感覚や思考とは別のものであり,感覚なしには表象は生じない.表象…

流出(3)

表象と流出にかかわるメモ.

痛み

先日,ペインクリニックや痛覚の生理学的機序に関するいくつかの講義をきいた.本日の日記はそれに関して.

representation

「表象」についての百科事典の解説(木田元「表象」『世界大百科事典』参照)表象は,哲学や心理学の領域で,おもにドイツ語の Vorstellung,英語の representation,フランス語の représentation の訳語として用いられる言葉であるが,その意味の範囲はさま…

流出(2)

先日の日記で「表象 Vorstellung」という言葉をとりあげました.「表象」は representation の訳語としても用いられます.本日は representation と Vorstellung とのかかわりについて考えたことを記しました.

流出

本日のフロイトの講読会では Verstellung(表象)という単語が話題になりました.以下,それにかんするメモ.

形而上学的

先日の日記に‘なぜ純粋理性批判を読んだのか’ということについてメモを記しました.‘自我や心について考えるための手がかりになると感じたから’というのがその答えのようです.

あなたを知ることなど

以上の箇所にかかわりがある(かもしれない)夢想.

『論理学』ほか(KDRV関連)

【KDRVとあるのは‘Kritik der Reinen Vernunft’すなわち「純粋理性批判」の略】

読了?

先日,『純粋理性批判』を一通り読み終わりました【第2版において削られた箇所は未読なので,あくまで「一通り」なのですけれども】. せっかくですので「純粋理性批判」についての覚書を折々書きたいとおもいます.そのなかであらためてみえてくることもあ…

見ると置く

酒井潔『自我の哲学史 (講談社現代新書)』を一通り読み終わる.予想以上に興味ぶかい内容であり,それだけに読みにくかった.これはメモをとりながら読む必要があると感じた.「西洋哲学でつねに想定されている認識モデルは,「目で見ること」である」(p.22…

怖い話

『貧しき人びと』(ISBN:4102010068)を読んでいる.「小心者で善良な小役人マカール・ジェーヴシキンと薄幸の乙女ワーレンカの不幸な恋の物語」【表紙カバーより.それにしてもヒロインを評して‘薄幸の乙女’とは――かえって清々しい】.作者への先入見もあっ…

純粋理性批判(英訳)

先日,Amazonにて純粋理性批判の英訳,Critique of Pure Reason (Great Books in Philosophy)(ISBN:0879755962)を購入しました.新品でおよそ1300円.一冊にまとまっているのもうれしい.これが邦訳ならもっとも廉価であろう岩波文庫版でも3冊で2000円は下…

人格の複数化

テツガクな先輩,通称テツ先輩は,自らの臨床経験から‘人格の複数化’を認める立場にたつ.‘人格の複数化’という事態を示すデータとしてテツ先輩はヒステリー患者の「もう一人の自分」体験に注目する.たとえば患者さんの il y a deux mois(2人の私がいるん…

部屋と幻

いわゆる多重人格について. 【関係しそうな日付:id:somamiti:20041027,id:somamiti:20041109,id:somamiti:20041209 】【主我(I)と客我(me)について:id:somamiti:20050323,数と名づけることにかんして:id:somamiti:20041030】

お金と現実

悪いのはすべて周囲のうす汚れた環境で,自分だけは清らかだという前提のナイーブさ.いざ根底にある生々しい心情を吐露してみれば,そこには‘金の切れ目が縁の切れ目’を体現するような自分の姿が在り,その醜さ浅ましさ疎ましさを看て取り,動揺する.精神…

コルシア書店の仲間たち

『コルシア書店の仲間たち』を読む.須賀敦子さんの書いたものを読むのはこれが初めて.適当に乾いていながら時おり色彩を感じる,好きなタイプの文章だ. - コルシア・デイ・セルヴィ書店。ミラノの都心、サン・カルロ教会の物置を改造してはじめた、小さな…