2005-08-01から1ヶ月間の記事一覧

お金と現実

悪いのはすべて周囲のうす汚れた環境で,自分だけは清らかだという前提のナイーブさ.いざ根底にある生々しい心情を吐露してみれば,そこには‘金の切れ目が縁の切れ目’を体現するような自分の姿が在り,その醜さ浅ましさ疎ましさを看て取り,動揺する.精神…

コルシア書店の仲間たち

『コルシア書店の仲間たち』を読む.須賀敦子さんの書いたものを読むのはこれが初めて.適当に乾いていながら時おり色彩を感じる,好きなタイプの文章だ. - コルシア・デイ・セルヴィ書店。ミラノの都心、サン・カルロ教会の物置を改造してはじめた、小さな…

ちょっとした更新

純粋理性批判 中 (岩波文庫 青 625-4)を読み終わる.巻末に近づくにつれて読み進める速さが増した.読んでいるのは岩波文庫版で,読むときは下巻に収録されている事項索引を使ってできるかぎり訳語と原語を対照しながら読んでいる.頻出する術語についてその…

曲がり角の彼方

『クリスマス・テロル』をパラパラみかえす.そういえば友人がこの本を渡してくれたのは,沙藤一樹の『X雨』との関連においてのことだった.いずれの作品においても小説世界と連続させるかたちで‘わけあってもう書けません(書きません)’という告白が書かれ…

看護学入門

看護師の妹から看護学とくに在宅看護にかかわる文献を借りてきてくれと頼まれる.もうずいぶんまえから社会人としてきっちり生きておられる妹に,まだ当分は親のスネを囓りたおす予定の兄はまるで頭があがらない.‘ヘンダーソン’や‘オレム’なる方の文献があ…

現象学チャート式

現象学 Phänomenologie は日本では20世紀初頭にフッサールが創始した哲学的立場を指すのが通例.現象学の立場につらなる有名な哲学者にハイデガー,サルトル,メルロ = ポンティなどがいる. Phänomenologie という語が造られたのは18世紀のドイツ.哲学では…

迷路

ツールとしての現象学,手持ちの現象学入門書(文庫・新書)の紹介+α

2人ゲーム

真っ黒な闇の中に溶けてしまう.心なんて何処にあるというの―― - ‘心をさがして動物を解剖していた女の子が,こんどは動物(その怨霊)から解剖されてしまう’そのとき,動物たちはその子にこのように告げる:「私達,アンタの心が知りたい.今度はあんたを殺…

『心脳問題』と第三アンチノミー

『心脳問題』では心脳問題――心と脳の関係についての問題――の争点を‘第三アンチノミーの問題’だとし,そのエッセンスは‘自由が存在するか否かの問題’だとする:わたしたちの心が脳の活動によって規定され,そして脳の活動が自然法則に従うものであるとするな…

自由研究

書き散らすテーマが何であるにせよ,気がつけばいつも‘心脳問題’じみたことに結びつけているようにおもう.本日は『心脳問題』に関連して,「純粋理性批判」での‘第三アンチノミーの問題’にかかわる論旨をおってみる,といった内容になった.

戯画化

見ろよ.僕の魂が飛んでゆく.魂が僕を見ているんじゃなくて,地上に残された僕が飛んでゆく僕の魂を見ている. - 「人体模型の夜」(松下紺之助『黄昏幻燈館』)という短編マンガがある. ‘心をさがして動物を解剖していた女の子が,こんどは動物(その怨霊…