ちょっとした更新

純粋理性批判 中 (岩波文庫 青 625-4)を読み終わる.巻末に近づくにつれて読み進める速さが増した.読んでいるのは岩波文庫版で,読むときは下巻に収録されている事項索引を使ってできるかぎり訳語と原語を対照しながら読んでいる.頻出する術語についてその原語を連想できるようになったことが,読み進めるうえで役にたったようにおもう.カント語がインストールされてゆく気分だ.

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いまのところ,このようにして読みすすめている:
原文:悟性の対象の現実的存在は,その対象の概念のうちに分析的に見出され得るものではない.客観の実在に関する認識は,客観がそれ自体思考のそとに置かれていることによって可能だからである(p.302)
読解:理解される対象が現に在ることは,その対象の概念を分析したからってわかるもんじゃない.オブジェクトのリアリティについての認識は,オブジェクトがそれ自体,思考のそとにある【思考の産物ではない】からこそ可能なのだ.
【原語を参照した語:悟性 Verstand (understanding),対象 Gegenstand, 現実的存在 Dasein (現に在ること), 客観 Objekt,実在 Realität】

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原書 and/or 英訳を読んだほうが読み易かったかもしれない.ただし日本語とドイツ語(ないし英語やラテン語)を対照させながら読むことで,これまで何となく使い分けてきた言葉たち【対象,客観,主観,現実,実在,現象,実体,存在,……】について,あらたな認識を得ることができ,さらには明確な意図や認識【あるいは辞書】にもとづいた使用法が身についてきたように感じている.