2006-01-01から1年間の記事一覧

終わりし道の標べに

書物への渇望は放下せよ. - 「断片集」と題するこのブログの目的は「精神は幻想にすぎず物質こそが真実である」「精神は脳の産みだした錯覚にすぎない」といった見解にかんして身を処するためのメモをとり,アーカイブとして参照することにありました.見ら…

思想の彼方へ

はてなでブログを記しはじめたきっかけは疏水さんのとある文章に情念をかきたてられたことだった(関連:id:somamiti:20041019). 「彼方への疾走」には死のイメージがある.どこまでも駆けてゆくその姿はこちらの視界ではどんどん小さくなってやがて消えて…

パターンと個別応答

「かわいそうな女の子」はトラウマや力を捨てたくないのだという解釈には解釈者の内面,解釈者の視点が投影されているだろう.すべては「かわいそうな女の子」の動機が問題だ,というのはとても安易な考え方だ.トラウマや力を欲したのは私でもあるはずだ(…

精神という環境

環境のなかにいる私たちは環境を作り出しそれとかかわって生きている.精神もそんな環境の一つなのだろう.

ありがちな話(2)

人づきあいが苦手.間が読めない.人と一緒にいて居心地がわるい.だから人のこころがわかりたい.人のこころがわかれば適切に身を処することができるだろう*1. 人の心をわかる,とはどういうことか.人の心はどうなっているのか.人の心をわかることはでき…

方法的懐疑

デカルトの方法的懐疑,気になる箇所の抜書き.『世界の名著27 デカルト』中央公論社.

ありがちな話

これまで自らの興味関心を心身問題(心脳問題)と位置づけて読書メモをとってきた.おおむね整理はついたとおもう(cf.id:somamiti:20061102).とはいえ気になる点も少しある.“心と物とのかかわりを考える”というけれどもこの「心」という語で私は何を指し…

桃および身体

「若冲と江戸絵画展」にゆく.授業のスライドでみてより気になっていた若冲の作品を数点みることができてよかった.鶴はお尻の丸さもさることながら鋭くはりつめた感のある嘴や脚との対照がおもしろかった.他のかたの作品も印象ぶかいものが多々あり,なか…

ココロとモノ

たいせつなのは問いの立てかたで,適切な問いの設定がなされているならばその答えはすでに得られているようにおもう. - このブログは「精神的なものは幻想にすぎず「本当に在るのは」原子の配列と物理法則に過ぎないという思考」についての考察にはじまる(…

心的現象と存在論

(サール『マインド 心の哲学』についてのメモ.id:somamiti:20061030) 心的現象,とりわけ意識には消去的還元はできない.このことを主張するにあたってサールは以下のように述べる:「もし私にとって意識の上で自分が意識しているように思えるのなら、私…

消去的還元

サールは以下のように述べる.心身問題における唯物論と二元論との対立のもとには還元をめぐる第2の混乱がある.それは消去的還元にかんするものだ. (サール『マインド 心の哲学』についてのメモ.id:somamiti:20061030)

マインド

マインド―心の哲学 “心の哲学”入門書.前半は心身問題にかんする議論が手短に紹介されていてうれしかった.後半は心身問題にかかわるさまざまな問題が紹介されているけれども(自由意志,知覚,無意識,自己など)入門書であるためか少々,かたすかしをくっ…

好きとか嫌いとか

哲学のことが好きか嫌いか,そんなアホらしい問いにかまけてばかりの昨今. - それはもう,好きなときもあれば嫌いなときもある.好き嫌いを云々することが成立してしまうくらいには関心をもってしまっている.腐れ縁というやつだろう. 『裏庭 (新潮文庫)』…

「内」について

先日の「内」にかんする引用の関連箇所.読書メモより.

年月

先日,本屋にたちよってはじめて岩波文庫からゲーデル『不完全性定理』の翻訳,河出文庫から『アンチ・オイディプス』の翻訳がそれぞれ出版されているのを知った.これくらいは買ってもよいかもしれない. - この2年間,無為に過ごしてきたようにおもってい…

陰摩羅鬼の瑕

吾,未だ生を知らず,いずくんぞ死を知らん. - 『陰摩羅鬼の瑕』を読む.ハイデガーの思想とがっぷり四つを期待して読みはじめたために肩透かしをくった.ハイデガーの思想はいわば風味づけのようなもので,基本にある素材は儒学の鬼神論であった.ハイデガ…

斎藤寝具店

弱者への愛には,いつだって殺意がこめられている. - 見世物は観衆によって成立する.そのスペクタクルに胸高鳴らせその成りゆきを見守る見物客によって見世物芸人はさらなる高みへと駆り立てられる.虐めにおいてなにより許し難いのはその場に居合わせなが…

若冲

疏水さんのところをみてはじめて京都で若冲展をやっていることを知った.これは見にゆきたい.

呼び声

しばらくまえからちくま学芸文庫の『存在と時間』ISBN:4480081372,ISBN:4480081380.睡眠薬や待ち時間の一服代わり.意味を読み取ることを放棄しているのでそろそろページをめくり終わりそうだ.縁があれば読み返すこともあるだろう. わかるようなわからな…

非肉体的

苦しまぎれに「精神的」を「非肉体的」などと記したが,演劇などのこと――そうではなくても,抑うつが現れるためには肉体(ないし文章や絵画などのメディア)が必要であること,たとえば蒲団にくるまって一日中横になっているということだって肉体を通さずに…

科学の力

耳鼻咽喉科コース終了.特別講義として「宇宙酔い」の話を聴く機会があった.以下のようなポイントがとりわけ印象にのこった: 1)「宇宙酔い」にたいする治療の第1選択は抗ヒスタミン剤(H1ブロッカー)の投与【プロメタジン50mg ← 静注か経口投与かメモし…

お蚕ぐるみ

我なにゆえにこの場に,身をば置く. (『お父さんは心配症』単行本,埋め草ページ) - お酒の席のような場所,人々が集って楽しく盛り上がるような場所があまり得意ではない.もちろん楽しいことは楽しい,しかしときおりこころが沈んでしまうことが申しわ…

その後

耳鼻咽喉科の講義をうけている.このところ皮膚科,眼科,耳鼻咽喉科と,いわゆるマイナー系の科目がつづいている.幼いころからアトピー性皮膚炎,近視,アレルギー性鼻炎などに親しんできたためか,なんとなく楽しい. とりわけ耳鼻科領域には,幼いころの…

確定記述の周辺

先日の日記に“この私”は私のもつ属性(性別,学歴,職業,年齢,趣味,……)の総和ではないという旨のことを記した.なぜなら“この私”はかけがえのない存在だから.とまあそれだけならよかったのだけれども,そこで集合などという用語をもちだしたのが下手の…

意味と無意味

哲学的意味がありますか? - 『からくりからくさ』ISBN:4101253331.「りかさん」と呼ばれる個物はたしかに「ここ」にいるのであるけれども同時にその魂はお祖母さんを見送りに「あちら」にいったきりのようでもあり,かとおもえば個物であるはずの「りかさ…

哲学入門?

「先生それって固有名(固定指示子)と属性記述とにかんするお話ですか」 「属性記述とはなんのことですか」 - 物語やフィクション,キャラクターやゲームのことばかり考えていたころ,いきおい余って『名指しと必然性 Naming and Necessity』という哲学本に…

皮膚と心

兄さんが死んだので,私たちは幸福になりました. - 試験も終わったし連休だし,というわけでケーキ屋さんでケーキを買ってきて食べる.まことにおいしかった.これまでケーキの類いはコンビニでしか買ったことがなかった. - ここしばらく皮膚科の講義をう…

きのこのこころ

ある朝,路傍の丸太に満月のような茸が生えているのを見た.夕方,それは黒々としなびた姿を路上にさらしていた. - 心は何所にあるのか.それはもちろん脳にきまっている.私たちは自分の意識状態をリカーシブ(再帰的)にモニタすることができる.すなわち…

本質,実体

「本質」や「実体」という言葉にかんして.アリストテレス『形而上学』出隆訳,岩波文庫の訳注を参考に. 理性によって認識される「本質」あるいは「形相」とは「〜〜はそもそも何であるか」という問いの答えだったらしい.そういえば「カテゴリー」という語…

直観など

「知覚」とりわけ「見る」ことと「見られたもの」としての「形」――「見る」ことによる「エイドス」の認識.この図式が「直観」という概念を介して横滑りし,「理性」による「本質」の認識という図式となる. 知覚ひいては認識とは,まずは「見る」ことだとい…