見ると置く

酒井潔『自我の哲学史 (講談社現代新書)』を一通り読み終わる.予想以上に興味ぶかい内容であり,それだけに読みにくかった.これはメモをとりながら読む必要があると感じた.「西洋哲学でつねに想定されている認識モデルは,「目で見ること」である」(p.222)「西洋哲学はプラトン以来,「見る」」(sehen)ということ,すなわち「不動の本質を見る」ということを遂行してきた.しかし同時にそれだからこそ,一切を「立たせる」(stellen),対象として目の前に「置く」(setzen)ということが行なわれる」(pp.223-224)という筋と,持続的・同一的・主体的な(西洋)近代の‘自我’観を論じるという筋の交わりぐあいがとりわけ関心をひいた.