読書

純粋理性批判(英訳)

先日,Amazonにて純粋理性批判の英訳,Critique of Pure Reason (Great Books in Philosophy)(ISBN:0879755962)を購入しました.新品でおよそ1300円.一冊にまとまっているのもうれしい.これが邦訳ならもっとも廉価であろう岩波文庫版でも3冊で2000円は下…

現象学チャート式

現象学 Phänomenologie は日本では20世紀初頭にフッサールが創始した哲学的立場を指すのが通例.現象学の立場につらなる有名な哲学者にハイデガー,サルトル,メルロ = ポンティなどがいる. Phänomenologie という語が造られたのは18世紀のドイツ.哲学では…

『心脳問題』と第三アンチノミー

『心脳問題』では心脳問題――心と脳の関係についての問題――の争点を‘第三アンチノミーの問題’だとし,そのエッセンスは‘自由が存在するか否かの問題’だとする:わたしたちの心が脳の活動によって規定され,そして脳の活動が自然法則に従うものであるとするな…

近ごろ読んでいる本

『自我の哲学史』の第II部第1章は「宮沢賢治の自我論」と題されている.そこでは賢治の自我論(自我は「心に次々と浮かんでは消えゆく心象の一つにすぎない」)を示すものとして「春と修羅 序」がとりあげられている:『春と修羅』冒頭で賢治が,「わたくし…

『老人と海』の背景

「老人と海」はそれまでのヘミングウェイの作品のなかで最良のものである.アメリカ文学の伝統のうえで,その弱点を長所に転換した作品である.ではアメリカ文学の弱点とはなにか.福田はそれをヨーロッパ文学との比較により論じる.

「私」は脳のどこにいるのか

数年前に「「私」は脳のどこにいるのか (ちくまプリマーブックス)」という本を購入した.当時は著者の主張(というよりも語り口)が好きになれず長らくダンボール箱の奥にしまいこんでいた.表紙カバーに船越桂さんの「水をすくう手」が使われていなければと…

 オートポイエーシス

オートポイエーシスが議論の焦点の1つとしているものに,「境界」がある.自己の境界はどこにあるのかと問うさいの境界である.口の中に雑居する60億個の細菌は,自己の内なのか外なのか.腸の中に住む百億個の雑菌は自己の内なのか外なのか.酸素を吸着する…

知の欺瞞

時がたつにつれ,ラカンの著作は,言葉遊びと断片化された統辞法をないまぜにすることで,ますます判じ物めいてきた.これは多くの聖典に共通する特性である.そしてこれらのテクストが,弟子たちによる敬虔なる教義解釈の基礎となっていくのだ.こう見てく…