『論研』覚え書き

『論理学研究』マップ試案+私的メモ.走書き.

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全体のテーマ:学問とは主観 Subjekt(たとえば研究者)が客観 Objekt(たとえば研究対象)について,その「真理」を認識する営みといえるだろう(たとえば観測によりモノの真の姿にせまる.観測データと論理的推論から自然法則を探究する.公理と論理的推論から「真」なる論理式(論理命題)を導く;数学的演算により正しい定理を導きだす(なにがしかの主張を証明する,など).学問すなわち「真理」を認識する営みはどのような基礎のうえに成り立っているのか.

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第1巻:心理学主義批判. ← 心理学主義:概念や命題は心的作用【心のはたらき】の産物だ.論理法則は心理法則【たとえばヒトの思考法則】だ.だから心理学によって論理学は規定される【心理学は生理学,生物学でも可】 ← フッサールの『算術の哲学』での心理学主義:「多」や「基数」の概念は集める,数えるなどの心的作用の産物である.

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第2巻:認識,思考 → 言語,表現 → 知覚(による充実),対象(の把握とは) → 真理,存在 → カテゴリー的直観;真理の認識(カテゴリー的直観にもとづく,イデア的なオブジェクトについての真理の認識〔ものと知性の一致〕)

第1研究:独り言について / 表現とは → 意味志向,意味充実,知覚と想像,直観【 → 『声と現象』】

第2研究:普遍的な対象(や真理)はいかにして知りうるのか.そもそも普遍的概念(もしくは普遍的観念 idea,普遍的対象)すなわちスペチエス Spezies( = species)はありやいなや. → イギリス経験論との対決.ミル,ロック,バークリ,ヒューム.【とくにバークリー,数学の証明との関連で】:普遍概念は,個々の物についての経験・センスデータから抽象されるのか,あるいはそもそも普遍概念とは虚構であるのか → 否.

第3研究:第4研究の準備 / 統一モメントについて【第6研究での主張との関連,第2研究での経験論批判との関連】

第4研究:意味の形式,無意味と反意味(文法と論理法則),普遍文法

第5研究:意識,志向性,統覚などの概念の検討・定義づけ / 質料 → フレーゲ,意味 Sinn と意義 Bedeutung(指示対象)の区別 / 写像説批判 / 表象という概念の多義性

第6研究:真理 = 知性とものとの一致 → 存在について(§39 明証と真理,など)/ 言語学との関連のありそうな用語:像(写像)関係と隣接関係【 → メタファーとメトニミー】,現在時称,表意 Signifikation(と直観),繋辞 Kopula【 → be,……は〜〜である,存在,/ 等号と繋辞,『論考』3.323】

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追記:
「観測データと論理的推論から自然法則を探究する」 → 昨今の自然科学においては「論理的推論」は「統計処理」と言い換えたほうが適当かもしれない.それでは「統計」による学問はいかなる基盤のうえに成立するべきか → 統計学という数学の基盤はなにか → 統計(ないし確率計算)の公理化と,集合論(ひいては“論理学”)による“基礎づけ”(公理系における定理の証明).フッサールの『論理学研究』のテーマは,そこで用いられる「論理学」そのものの成立基盤を明らかにすることにある(多分).

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「真理」を認識する――観測・観察によってはモノの「真の姿」を知ること.では自然法則や論理法則を「認識する(知る)」とはどういうことか.目には見えず音にも聞こえない「法則」を「知る」とは.そもそも「法則」(ひいてはモノゴトの「本質」)などはフィクションの産物なのだろうか → 五感では把握できないモノゴトもまた「直観」により把握される,という主張へ【この「法則」に関連する考察が,第3研究や第4研究なのか?】