いとしき望み

そんなことを言ったって,こうして来てるんだから,やっぱりすきなんだよ.なあ,やっぱり好きなんだ.(太陽と鉄)

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『論理学研究』読了.しかし内容を把握した実感はまるでなく,徒労感が昂じて鬱々とした日々をおくる.
ああ折角の夏季休暇をなんと空費してしまったことだろう.もとより私ごときには分不相応な本だったのだ.しかし,あたうる限り内容の把握に努めたうえでこの結果というのはどうしたことだろう;それよりフッサールフッサールやで.論旨の明確でない論文に意味はあるのでしょうか.現象学なんて,というよりも哲学なんて,けっきょくのところ言葉遊びにすぎないのではないか――とすればそのような遊びに熱をあげてしまったのはなぜだろう.それは知的虚栄心や世間一般の娯楽との縁のなさ,そしてまた涼しい部屋で本を読んで過ごしていればそれなりに幸せという惰性の産物なのだろう.こうして夏季休暇は空虚に過ぎてゆく.いや,そもそも私の人生はすべからくそうなのだ.私は人生を空虚に過ごしてしまった.かくも恵まれた境遇にありながら私は何を得ることも何をなすこともなかった.もうダメだ.もはや,何にも価値を見出せない.何ひとつとして興味をひくことはない.云々.
【その後,絶望は怨念に転じ,“かくなるうえは毒くわば皿.夏季休暇の残りは「現象学的精神医学」なるものの虚妄を暴いてくれよう.これにて現象学,ひいては哲学なんぞは三行半よ”と読んだ文献が意に反して興味ぶかく,「やっぱり好きなんだよ」と囁かれているようで気持ち悪い.哲学なんぞもうウンザリだ】.

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上記の過程のなか,気分の“デフレスパイラル”が最高潮に達したころに藁にもすがる気持ち半ば,自嘲の気持ち半ば(しょせん私ごときには,おフランス哲学や現象学なんて高尚なものじゃあなく,アメリカ式の俗流プラグマティズム自己啓発セミナーくらいがお似合いだったのさ)で『いやな気分よ,さようなら』(ISBN:4791102061)を購入.“ひとりでできるもん!(うつ病認知療法編)”って感じの本.本書が届いたときにはすでに絶望は怨念に転じて久しく時機を逸した感があったが,ためしにベックのうつ病調査表(BDI : Beck Depression Inventory)を行ったところ結果は14点.「軽いうつ状態」であった(11-16点で「軽いうつ」.なお臨床的なうつ状態との境界は17-20点).おお,これはチョッとヤバいかも.
といった次第で認知療法の勉強も兼ねて本書を読んでおりますが,いろいろと興味ぶかい.気分の“デフレスパイラル”をもたらす思考(認知)の改善のための手段としてさまざまな方法が具体的に紹介されているのも,思弁に倦んだ身に心地良く頼もしい.これがアメリカだ!ってかんじで.
なお,読んでいるのは増補改訂版だけれども,どうやらつけ加わったのは抗うつ薬にかんする解説のようだ.記述はけっこう具体的で内容も期待できそう.