犬の幾何学(2)

「時とともに《客観性 objectivity(おおくの人びとが妥当だとするようなモノゴト object らしさ)》が変化する」という命題.これが奇妙だとおもう感性は,いまとなっては「時代遅れ」かもしれない.現代の‘量子力学’的世界観【あるいは古代ギリシア以来の伝統をもつ相対主義的世界観】においてはむしろ「永遠の真理などない」「客観性といってもそれは文化によって束縛されている」「人生いろいろ,真理もいろいろ」とするほうが,むしろ常識かもしれない.「時とともに常識は変化する.それゆえ常識に従がう真理も変化する」.この現代の常識を「相対論」とよぼう.そのアントニムである近代のコモンセンスを「絶対論」とよぼう.相対論の否定は絶対論,絶対論の否定は相対論である.
(『犬の幾何学』)

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流れそのものは流れない(現代思想としてのギリシア哲学 (ちくま学芸文庫)

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おもに「飛ぶ矢は飛ばない」というパラドクスにかかわるだろう連想とノート.ほとんどは文献を飛ばし読みしてまとめたのみ.長いです.

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