時代区分

中世哲学マップ(2)

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区分1(文献2)

中世哲学の区分:(A)教父時代(1〜8世紀),(B)狭義の西洋中世哲学の時代(9〜14世紀)

(A)教父哲学:キリスト教の成立-8世紀末
初期教父時代:二ケア公会議(325)まで.東方のギリシア教父が主流.父なる神とその子の関係を問いつつ,根拠の構造を三位一体論に定式化する.
盛期教父時代:ニケア公会議(325)からカルケドン公会議(451)まで.コンスタンティノポリス公会議(381)における三位一体論の展開,カルケドン公会議(451)における神人論における受肉の意義(根拠への道としてのキリスト)の定式化:ギリシア的三位一体論の定式;三つの基体(ヒュポスタシス)と1つの本質(ウーシア).アウグスティヌス(354-430)の活躍 / ローマ帝国の東西分裂(395)
晩期教父時代:カルケドン公会議〜8世紀末 / 西方では西ローマ帝国滅亡(476)と蛮族の侵入.

(B)スコラ哲学:9世紀〜15世紀(関連:アリストテレス哲学の翻訳;12世紀にはトピカ,分析論,13世紀には自然学,形而上学,霊魂論(デ・アニマ)などが翻訳)

初期スコラ哲学:9-11世紀.カロリング・ルネサンス(シャルル大帝の宮廷学校),アルクィヌスらによる古代アテナイの知恵の復興,自由学芸七科 artes liberales (三学(文法,修辞,弁証論)四科(算術,幾何,音楽,天文)).農村の修道院付属学校において隆盛.

中期スコラ哲学:12世紀(12世紀ルネサンス).商工業の発達,パリをはじめとする都市化(都市の空気は自由にする).都市型の司教座聖堂付属学校において隆盛 / 普遍論争(普遍(類,種)は実在するか否か,もの(res)か音声(vox)か),アンセルムス(実在論),ロスケリヌス(唯名論),アベラール(概念論)など / ロンバルドゥスによる『命題論集』の提示【いわば"教科書"】.

盛期スコラ哲学:13世紀,勝義の「スコラ哲学」の完成( ← (1)アラビアの科学や哲学,とくに「アリストテレス全集」の西方への翻訳導入,(2)諸大学の設立(ボローニャ大学(1158年に公認),パリ大学(1215,1257年にソルボンヌ学寮成立),オクスフォード大学(1160年代後半に大学としての体裁を整える)など),(3)托鉢修道会の設立(フランシスコ会ドミニコ会)).トマス・アクィナス(1225-1274)による『神学大全』の成立 → 以降は『神学大全』の解体過程.ドゥンス・スコトゥス(1265-1308)など.

晩期スコラ哲学:14世紀-15世紀.『神学大全』の解体.オッカムのウィリアム(1280 or 1290ごろ-1349)など.

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区分2(文献3)
古代哲学( = ギリシア哲学): 紀元前420-320ごろ = ソクラテスプラトンアリストテレスらの時代.
中世哲学第1期(古代):AD3世紀頃.新プラトン主義(ネオプラトニズム)とキリスト教の拡大 → 教父哲学.教父哲学にはプラトン哲学とネオプラトニズムが入り交じり聖書解釈がふくらむ.ローマ帝国の東西分裂(395) → の教父哲学も東方と西方に.アウグスティヌス(354-430,西洋の父),西ローマ帝国の滅亡(476).
中世哲学第2期(アラビア期):【イスラム教の成立(610),ウマイヤ朝最盛期(8世紀初頭) → アッバース朝(750-1258)】アッバース朝 = イスラム帝国における文化の隆盛,ギリシア哲学(とくにアリストテレス哲学)のアラビア語訳と研究.アヴィセンナ【イブン・シーナー】(980‐1038),アヴェロエス【イブン・ルシュド】(1126〜1198)など → のちにヨーロッパに輸入.
中世哲学第3期(スコラ前期):11世紀後半にアンセルムス(1032-1109,スコラ哲学の父)による信じる対象【神】について理解を求める」(知解を求める信)というスローガン → 修道院における哲学研究(アウグスティヌスを模範とする).12世紀初頭,ヨーロッパ社会の都市化,各地で大学の設立,アベラール(1079-1142,普遍論争を調停)のパリでの活躍 → 大学におけるスコラ哲学へ.
中世哲学第4期(スコラ盛期):12世紀おわり〜13世紀はじめにアラビアを経由したアリストテレスの輸入,パリ大学における哲学研究.13世紀半ばにはギリシア語からの直訳もなされる → 【アウグスティヌス = (ネオ)プラトニズムに代わり】アリストテレスが哲学の中心となる → アリストテレスを基礎とする神学へ.とくに1260〜1320ごろに頂点に達する(トマス・アクィナス(1225-1274),ボナヴェントラ,ドゥンス・スコトゥス(1265-1308)らによるスコラ哲学の展開).
中世哲学第5期(スコラ後期):14世紀.スコラ哲学の体系化 → 瑣末化,煩雑化へ.オッカムのウィリアム(1280 or 1290ごろ-1349)など.デカルトが学んだスコラ哲学はこの時期のもの.
中世以降のスコラ哲学(近現代):国際法の研究では16世紀以降もスコラ哲学者は重要な役割をはたした.

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