心脳問題の4つの立場

心脳問題―「脳の世紀」を生き抜く より。同書の第2章では「心脳問題」すなわち‘心と脳の関係をどう考えるか’という問題について,これまで与えられてきた解答を唯物論,唯心論,二元論,同一性の4つに分類する【なお,この分類は基本的にマリオ・ブンゲ『精神の本性について』(産業図書)にもとづいている】:

唯物論:人間の本質はモノである(モノでしかない).人間はモノの側面からのみ説明できる.
唯心論:人間の本質は心である.物も人間によって意識されてはじめて存在する.
二元論:人間の本質は物と心である(一方を他方に還元できない).
同一説:人間は物であると同時に心である.物と心は人間の二つの側面である.

同書によれば(第三章),「心脳問題」の争点は「人間はモノの法則だけで説明できるか」「人間はモノに還元できるか」ということである.いいかえれば,人間は科学が記述するような自然法則によって説明しつくせるか否かということである.これは,カントの「純粋理性批判」における第三アンチノミーの問題として定式化することができるという.心脳問題をアンチノミーの問題として定式化することにより,筆者らは心脳問題を,人間の理性がおのずと提起し,かつ決して解くことはできない問題として位置づける.