科学哲学入門

「科学哲学入門」を読了する.かなり興味ぶかい内容だった.「帰納法」という用語が時代や論者によって異なった意味に使われているということ【帰納法といえばミルによる定式化のみを念頭においていた】,19世紀において科学的探求の現場には確率・統計的方法が導入され,それにより科学の方法は変化し,科学の方法論や科学観にまで影響を及ぼしたということ,そうした事柄が具体的な文献資料にもとづいて示されていることがとくに印象にのこった.反証主義ポパー),パラダイム論(クーン),観察の理論負荷性(ハンソン)といった主張や概念について,これまでは科学哲学の議論を背景にした評論文を読むなかで漫然と把握していた.それらに関してそれなりのデッサンが得られたのもよかった.本書の途中ではベイズの定理が紹介されるのであるが,そこで用いられている公理化された確率計算の体系を理解するうえで,これまであてもなく勉強してきた論理学の知識が役にたったことはうれしかった.