離人症、ほか

フロイト様の『精神分析入門』第27講「感情転移」より

医師に対して患者が情愛的に結びつくという事実が,いつもくりかえされます.たしかに,どんな誘惑も存在しないと判断される場合でさえ,くりかえし,そうした事実が現われるのです.こうなりますと,これを偶然の障害だとする考えは捨てて,病気そのものの本質ともっとも奥深いところで関連する現象だとみとめざるをえなくなります.
この新事実を私たちは〈感情転移 Übertragung〉と呼んでいます.医師という人物へ感情が転移されたと考えるのです.そうした感情はどこか他所ですでに準備されていたのであり,患者の心中で準備されていたものが,分析的治療を受けるのを機会に医師という人物へ転移されるのだと推測するのです.
【Übertragung:移すこと,他の領域への転用,病気の伝染,権限の委託,など】