区切り

私たちのここでも地に落ちた星が人間の姿をして吸血鬼になるのです.

  • -

ザッヘル=マゾッホの世界 (平凡社ライブラリー)』は期待以上によかった.
さまざまな事例提示とともに論じられているマゾッホとその背景(19世紀の東欧と西欧,キリスト教とスラブやビザンツ,……),その同類項や派生物(たとえばベルメールウルスラ,ゾラの『ナナ』,フェレンツィの「タラッサ」,フロイトと言語,カフカと法,クラフト = エビングの『性心理学』による命名ヴァン・ヘルシング教授によるドラキュラの‘杭打ち’……)には好奇心をそそられた.また,本書のところどころでドゥルーズマゾッホ論(「ザッヘル = マゾッホ紹介」など)のキーワード(「契約」「反復」「宙吊り」など)がもちいられている.マゾッホの伝記的事実や内面とともに提示されたことで,それらのキーワードを把握することがより容易になったように感じる【『マゾッホとサド (晶文社クラシックス)』のいわば副読本としても本書は役立つようにおもう】.

本日,注文していた『知の構築とその呪縛 (ちくま学芸文庫)』が届いた.『心脳問題』がらみの本である.おおまかには「日常生活の風景と科学者が原子や電磁場で描く世界は一心同体,一にして同じもの,と見る」(p.18)ことを述べた本.このように見ることは少なくとも知覚の場面において「心」と「世界」「自然」が一つのものだとみることであり,ひいては「「心」と「自然」とは一にして同一」(p.18)とみることとなる,とのこと.心脳問題にかんしてはまだまだ読むべき本もあるとはおもうが,ひとまずはこの本をもって一つの区切りにしようと考えている.

  • -

族長の秋 (ラテンアメリカの文学) (集英社文庫)』の感想+覚書はいたずらに長くなりましたので下に【メモの分量は感情の揺れとおおむね比例するようです】.試験がさしせまってきたのでブログはしばらく自粛いたします.