Cabanis

週末に精神病理コロックという催しが近場であることをテツ先輩からの電話で思いだす.聞きたい発表はあるのですが参加費用の高さに二の足.

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先日の日記に絵や文章を‘精神の分泌物’として把握できないか等と記した.何やら聞いたことのある言い回しだなと感じていたけれども,どうやらカバニスの以下のような言葉が参照項であったようだ:「肝の臓が胆汁を分泌し,腎の臓が尿を分泌するように,脳髄が思想を分泌する」(P.フルキエ『哲学講義2 認識II』ちくま学芸文庫,p.420より)
精神はモノ(脳髄)の分泌物(モノ → 精神)という旨の言葉と,精神の分泌物としての絵や文章などのモノ(精神 → モノ)という言回しとでは矢印の向きが逆である.またそれらの表現物を「モノ」とよぶことにも無理があるだろう.それらには表現 (der) Ausdruck, expression すなわち外に押し出されたものとして,何やら腺組織からの分泌物に似たイメージがあるのだけれども.ホルモンのような物質とは異なり絵や文章はなにがしかの「意味」をもって私たちに語りかけてくる.
とはいえ生理学の本ではホルモンなどの分泌物,ひいては細胞のなかのタンパク質や遺伝子などのモノもまた「情報」を担う媒体であると書き記されていて,とにかく情報,情報,情報と,そこから「情報」と「意味」の相違が気になりもする.

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絵や文章や妄想などには精神(それらを表現する「私」)が形(形態,形式)としてうつし出されている.それら表現物の形を読むことにより,さながらCTを読影するようにして精神や「私」について知ることができるかもしれない.このような考えをもってこれを記している【なにやら,年末に疏水さんとお会いした折りのようなお話】.

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カバニス Pierre Jean Georges Cabanis
1757‐1808
フランスの哲学者,医学者,心理学者.パリ大学医学部教授(衛生学,内科学).
エルベシウス Hélvétius 夫人のサロンの常連として, ディドロ Diderot, ダランベール d'Alembert, コンディアック Condillac らと交流; 革命では民衆側につき, 革命家ミラボー Mirabeau の親友であった.1797 年に五百人会議のメンバーに, 1799 年には元老院のメンバーに選ばれている.ナポレオンの権力奪取を助けたが,のち彼と敵対した.
イデオロジスト(観念学派)に属し,主著《身体と精神との関係 Rapports du physique et du moral de l'homme》(1802)において,精神的事象は身体の生理的事象との関連において解明されるべきであると主張し,生理的心理学の創始者のひとりとなった.作家スタンダールに影響を与えた.
(世界大百科事典,など)

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