播種

名づけえぬものに緩やかに近づき、

散在するのか、乳母よ あなたは

高貝弘也「播種の鎮魂」より)

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週末は消化器の試験その1.とりあえず癌はおそろしい.しかし潰瘍性腸炎や腸閉塞もおそろしい.そんな日々.

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スタジオジブリが「ゲド戦記」をアニメ化するらしいです.

参照:http://www.asahi.com/culture/update/1213/014.html

「映画は第3巻を基に、災いに覆われた世界を救おうとするゲドと、彼と共に旅する王子の成長を描く」とのこと.第3巻といえば印象にあるのはクモや黄泉の国のことばかりで「旅する王子の成長」といわれても‘はて,そんなお話だったかしらん’といま一つピンとこないのですが,いずれにせよ楽しみです.

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ゲド戦記」といえば第一巻「影との戦い」は‘影’と‘名づけること’をめぐるお話だったようにおもう.ユングの元型論のようなお話【一面的な解釈をすれば,名づけることによって影を飼い慣らすお話だということもできるかもしれない】.
‘名づけること’から,あらためて離人症のことに思いめぐらす.離人症において「現実感」や「実感」の喪失に悩み苦しんでいるとして,その「現実」や「実感」とはそもそも何を名指しているのか.むしろ空虚な欠落感や不全感【と表現するとカッコイイですが,まあ劣等感や焦燥感の類い】が先にあり,それを埋めるモノ x が「現実」や「実感」と名づけられたのだ.このような解釈もなりたつだろう【近年における‘離人症’の減少は,「現実」や「実感」なる言葉が x の名として流行らなくなったことによる――と解釈することもできるだろう】.

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DSM-IV離人症を「300.6 離人症性障害」として「解離性障害」のなかに含める.解離性障害には他に「300.12 解離性健忘」や「300.14 解離性同一性障害」などが含まれる.一方,ICD-10では離人症は「F48.1 離人・現実感喪失症候群」として「F48 他の神経症障害」の1つとされ,「F44 解離性(転換性)障害」とは異なったものとして分類される.離人症そのものがどのような病因・病態による疾患であるか(そもそも疾患であるのか)定かでないこともあり,解離性障害に含める分類と含めない分類のどちらが正当であるかはいえない.
ただ,そもそもの「解離 dissociation」の概念を構築したピエール・ジャネは,いわゆる神経症にあたる状態をヒステリーと精神衰弱に大別し,「解離」をヒステリーの,「現実機能の減弱」を精神衰弱の心的メカニズムとしてそれぞれ想定していた.そして解離性同一性障害は「解離」によるもの,一方の離人症状は「現実機能の減弱」によるものとした:ジャネにおいては離人症は「解離」による精神障害とは異なるものとして扱われていた.このことを考慮にいれるとDSM-IVにおける「離人症性障害」の分類には疑問を感じる.
DSM-IVにおける「解離性障害」はあくまで「名前」にすぎないのかもしれませんが】【とはいえ「解離」という名前は,「解離」という理論ないし仮説と無縁ではいられない,と思うのです】

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以上,おもいつくままに.