数学と哲学の違いは

数学では経験に依存することなしに学問的な認識を広げることに成功している.ある種の哲学では数学の方法がマネされる.そうした哲学の方法を独断的方法とよぼう.独断的方法は数学のようには成功しない.なぜなら哲学と数学ではそもそも認識の方法が違うからだ.哲学的認識は「概念による理性認識」である.数学的認識は概念の「構成による理性認識」である.

概念を「構成 construction」するとは,概念に対応する直観 Anschauung, intuition をア・プリオリに現示 presentatioon することである.概念の構成は非感性的 non-empirical な直観による.その直観そのもの【たとえば,紙に描かれた三角形】は個別的だけれども,それはまた概念(一般的表象)のなかに含まれるあらゆる直観【三角形として分類されるあらゆる三角形】についての普遍的妥当性をもつ.

例:三角形の「構成」を考えよう.「構成」は以下の2つの方法のいずれかによる:三角形の概念にあてはまる対象 object を,

(1)頭のなかでイメージする(想像によって純粋直観として現示する presentation by mere imagination――in pure intuition).
(2)具体的に紙に描いてみる(純粋直観に従って,紙上に経験的直観として現示する presentation upon paper――in empirical intuition).

どちらにしろ,これはア・プリオリなプレゼンだ;描きだされた三角形は経験的【個別具体的】な図形であるが,それは三角形一般についての概念を示すためのものである.【関連:id:somamiti:20050922】

すなわち,数学的認識は「普遍を特殊・個別的なものにおいてア・プリオリに考察する」ことによって得られる.一方,哲学的認識は「特殊を普遍において考察する」ことによる.

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