帰去来

本日,知らせがあった.祖母が亡くなったということだ.
祖母の享年は91歳だった.

祖母について知っていることはあまりない.お盆や年末年始に訪問するときまって黄粉餅をだされたことをおぼえている.子どものころの孫の好みをおぼえていて孫のほうの嗜好がかわってもかわらずそうした品々でもてなしをしてくれるというのはもう一方の祖母もおなじだった.子どもとは時間の尺が違うのだろう.

このたび亡くなった祖母はこの数年やや‘呆け’た状態にあった.とくに3年ほどまえは状態がわるく施設に面会にいったところ伯父と間違えられたことをおぼえている.そのとき祖母は帰りたいと愚痴をもらしており私は単純にそれをそれまで住んでいた家のことだとおもっていた.けれども後に伯父や伯母の話をきくと施設から帰宅させてみてもあいかわらず帰りたい帰りたいと連呼するということで,伯母によれば若いころ東京で暮していた祖母はおそらくそのころ住んでいた場所に帰りたがっているのだろうという.なんとなく説得力を感じた.帰りたい場所はいまはもうない.

そののち祖母とは昨年の正月あるいは今年の正月に会った.詳しい日時はおぼえていない.そのときには私のことは孫だとわかってもらえたし帰りたいとなげくこともなかったことはおぼえている.