人形の眼

たとえば人形。暗い部屋に一人きり。部屋の片隅には人形。
人形の視線を意識する。人形にみられている。人形は私をみている。ばかばかしいと思いながらも私は人形の顔を後ろ向きにする。すると今度は、人形が私のほうを向いているのではないかと気になりはじめる。ばかばかしい。しかし気になって仕方がない。何度も何度も確認する。人形の頬をなぜて猫なで声で話しかける。

【というよりも背後に置いたままだからいけなかったのだ。いっそのこと机の上に、たとえばパソコンのディスプレイの傍らにでも置いておけばよかったのだ。それならば万が一人形が動きだして私に危害を加えようとしてもすぐに対処することができて安心だ】【しかし何故、私は人形に復讐されねばならないのだろうか。というよりもなぜ人形が私に危害を加えるというシチュエーションが、すぐさま人形が私に復讐することとして思い描かれたのだろうか。】