結核

以前,学校の授業で結核について話を聞く.

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結核の流行は産業革命ならびに近代化・都市化と連関している.結核という病は古来よりあった.しかし離散して生活を営んでいる集団にあっては,ある場所での結核菌の繁殖も,1つの家族や1つの村落のうちにとどまる.一方,人が集まりその出入りも激しい都市部でひとたび結核が生じれば,それは大規模・広範囲に流行をみることになる.産業革命の時代,都市部の人々とくに劣悪な労働条件下におかれ衛生的,栄養的に貧しい立場にあった労働者階級のあいだで結核は猛威をふるい,「白いペスト」と呼ばれたという.
その他のことも,たとえばブロンテ姉妹の死因は結核だったという逸話や,結核ロマン主義ないしサナトリウム文学との関連性についての話も十分に興味ぶかかった.
関連文献:結核という文化―病の比較文化史 (中公新書)

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結核なり,あるいは不治の病なりと聞くと,いつの間に植え付けられたのかはしらないが,旧家の蔵のなかに閉じ込められた美しく病的な娘,というイメージが湧く.そうして「僕」だか「私」だかは,その娘と夕暮れ時に,たとえるならば二人きりの繭のなかにいたり,あるいは娘と誰かがそのような在り様である姿を垣間みたりなどする.このイメージの由来は横溝正史あたりだろうか.比較的あたらしい作品では冬目景の『羊のうた』などがそのイメージに近いのだがマンガとして形にされると違和感がある.それなりに起承転結のついたストーリーとして収束する姿をみせられるというのも落ち着かない.あの画風や色使いはソマミチのイメージするそれにかなり近いのであるが.沙藤一樹の小説も‘結核’から連想される‘薄暗がりの繭の中’的な感覚を呼び起こしてくれるもので好みだ.孵ることのない胚珠というイメージ.