風景

ある集合について可能である部分集合のすべてを集めた集合であるところの集合すなわちベキ集合,などという記述のイメージ化を試みるうちに眩暈.眠気.夢うつつに猫の声をきく.
プラトンアカデメイアの門に数学(幾何学?)を知らざるものこの門をくぐるなかれと記していたそうだ.数学の記述.余計な肉を削ぎ落とした普遍永遠の真理.そのスタイルによって数学はイデアを記述ないし看取するためにはうってつけの言語だとされたのだろう.コトバには未だ余計な肉が付き過ぎていると折りにつけおもうことがある.芯にあるもの,ジクジクと染みだしてくるヤニが風雨により永の年月を経て漂白された骨.

ワタシは眼が悪くて,眼が悪いというよりも識別能が悪くて,いろいろなものがみえているのにみえない.なにもかも見過ごしてしまう.ワタシの脳髄にインストールされている辞書がワタシの世界を規定する.よくみえる眼,遠くまでみとおせる眼がほしい.ユクスキュルの描くダニの世界.ダニは自らに固有の世界を生きている.主体としてのダニのありかたを捉えること,主体としてダニが生きる世界,ダニの‘眼’にうつる世界すなわちダニの環境世界(『オートポイエーシス―第三世代システム』).

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これらについて人や銀河や修羅や海胆は/宇宙塵をたべ または空気や塩水を呼吸しながら/それぞれ新鮮な本体論もかんがへませうが/それらも畢竟こゝろのひとつの風物です.

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