海馬など

記憶力を強くする―最新脳科学が語る記憶のしくみと鍛え方 (ブルーバックス) は,なにやら胡散臭いタイトルであるが,学校の授業で先生がとりあげられていたこと,その折の話が興味ぶかかったこと,実際にページをめくってみたところ意外にしっかりした内容のようにおもえたことから購入を決定.
タイトルどおり記憶の話である.学校の授業で「記憶」に残っているのは,「海馬」に関する話.
いわば,「海馬」とは短期記憶から(おそらくはパペッツの回路を巡るプロセスにおいて何らかの‘情動’とリンクしたものを)長期記憶と化するための門あるいは門の管理者である.「海馬」が破壊されると新たに出来事を記憶する能力,すなわち記銘能力が障害される.しかしエピソード記憶意味記憶,手続き記憶など,長期記憶にカテゴライズされる記憶は残る.アーカイブは残り,そこから‘本’を取り出してくることはできる.しかし新たなコトバを書き留め,編集し,‘本’にして収蔵するといったことができなくなる.

記憶にはさらにプライミング記憶なるものがある.プライミング記憶とは‘現在’の行動に影響を与えていると想定されるところの‘過去’の刻印(すなわち記億)である:
例:学校の売店で本をみていた.ふとあるタイトルが眼にとまる.そのタイトルは『自殺のベストポジション』.なんと刺激的なタイトルだ.ひところ流行した『自殺マニュアル』のような内容なのだろうか しかしよくみると,実際のタイトルは『自殺のポストベンション』というものだった.

※ポストベンション:事後の対応

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ザッヘル=マゾッホの世界 (平凡社ライブラリー) .
「マゾヒストの世界体験とは言語体験としての世界体験である 追悼 種村季弘
という帯の売り文句にたまらず購入.装丁がカッコイイ.とはいえ,河出文庫から出ていたマゾッホ『毛皮を着たヴィーナス』の装丁には金子國義先生の作品が使用されていて,そちらのほうが好み.