内面と界面(2)

内面あるいは界面について考える.ドアのことを考える.私はドアの入口に立っていて,家の中と外を同時にみることのできる立場にある.

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内面を「視」ようとしてみた.自らの内面について思いめぐらせてみた.だが声が聞こえるだけで,なにかがみえるわけではない.なにかを「内面」から(あるいは「内界」から)思いだすときには,たいていは,その思い出が「語られる」だけで,「回想シーン」が「眼の前」で繰り広げられるわけではない.
「外面と内面とを区別できる人の視点は両者のはるか上空にあると言える」.自らの内面についてあらためて把握するために要請される俯瞰的な視点.はるか上空にある視点.
その視点にもまた内部や「背後」が想定される.

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「他人の心(内面)は見通せない」.では他人の内臓はどうだろうか.他人の内臓もまた切り開かねば見通すことはできない.「腹黒い」ということと「臓物」の色.
生物体について考える.私の内面あるいはナカミは私のものであり他とは隔てられている.私の内面は「私のもの」.私の身体も私のもの.他の視線から隔てられた私の所有物としての「内面」.

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引用や手紙という主題に関連して:引用は正確でなければならない.引用において「恣意的に」元の文章を歪めて使用することはゆるされない.言葉をそのまま受け売りすることから,それを歪めること,「故意に」歪めて使用すること,簒奪し我が物とすること,嘘をつくことへの移行.そうした移行と「内面」や「私」(私の本当の気持ち)の成立はパラレルであるようだ――嘘.秘密.他人の眼から隠された領域としての内面の成立.嘘をつき他人を欺き他人に先駆けることで成立する「私の気持ち」.
【界面と内面のズレ,あるいはドメインとインタフェースのズレ:主人たる私の住処というのとは少し異なる場所.その時々に,内/外にむけての語りとして,さながら灯台のように示される(みられる)「ワタシ」――(あらゆる透明な幽霊の複合体)】.