媒体

――眠れぬ夜に.

「Aという(客観的な,オブジェクトな)原子の配列を再現することでA’という(主観的な,サブジェクトな)精神現象は「そっくりそのまま」「一対一対応で」再現される」という一文.
世界のある特定の在りかた(A)を再現すること.それはどのようにおこなわれるのだろうか.

と問いのかたちをとってはいるが,その再現は不可能である,とふと考えた.(すくなくとも世界の外部に,「世界を超えた」なにかを想定しないかぎりは)

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1.原子あるいは陽子に中性子に電子,あるいは端的に「基本となる物質」
その「「基本物質」の配列」が「この瞬間の世界の状態の全て」である.
2.その「配列」を再現すれば,それに依存する現象
(たとえば「精神」,たとえば「未来のできごと」)は,すべて,1:1対応で再現できる.

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としてさて,その「基本物質」の「配列」という「情報」は「どこに在る」のだろうか.
――たとえば複製,コピーの制作においては,「情報」は「原版」から「複製」に写されると考えうるだろう.そのとき「情報」は複製を作成するヒトの頭のなかや,コピー機記憶媒体に,一時的に保持されているのだろう(たぶん).
しかし「世界の複製」の場合は,そうした「情報」を一時的に保持している「メモリ領域」を,
「世界の内部」に位置づけることができない(位置づけてしまうと,その領域は「同時」に「複製の対象」でありかつ「複製のエージェント」となり,破綻が生じる(自分が保持している情報を,さながら合わせ鏡のように,複製しつづけることになる)).