声と距離

久しぶりに声を聴くことのなつかしさ【そういえば「懐かしい=ナツカシイ」や「懐く=ナツク」は「懐=フトコロ」と書く】.声の主を身近に感じる.すぐ傍に相手がいるようで,というよりも自身がいつのまにか語らいがなされている場所にいて,話を耳にしているような錯覚.
『電子メディア論』では‘長電話をしているうちにふと自分がどこにいるのかわからなくなる’という体験がとりあげられている.長電話に‘我を忘れ’ふと‘我にかえって’みると自分のいる場所に違和感を感じる.それは自己離脱感,‘電話の彼方の世界(あるいは電話というメディアの空間)に没入し,声として純化されて在る’状態において,〈現実〉の自分から離れてしまう体験であるという。

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