バベルの図書館

論理や数を記号に置き換えて操作・展開することはキモチよい。
「引用」や「手紙」などにかんする諸々の考えと、何か通じるものがあるように感じる.

……,ある天才的な司書が図書館の基本的な法則を発見した.この思想家のいうには,いかに多種多様であっても,すべての本は行間,ピリオド,コンマ,アルファベットの二十五字というおなじ要素からなっていた.また彼は,すべての旅行者が確認するに至ったある事実を指摘した.広大な図書館に,おなじ本は二冊ない.彼はこの反論の余地のない前提から,図書館は全体的なもので,その書棚は二十数個の記号のあらゆる可能な組み合わせ――その数はきわめて厖大であるが無限ではない――を,換言すれば,あらゆる言語で表現可能なもののいっさいを含んでいると推論した.

「バベルの図書館」『伝奇集 (岩波文庫)