内面と外面

内面は外面と隔てられている.境界により区分される領域のいずれを「内」とし「外」とするかは相対的なものだ――そうだろうか? 
「私」の外面は他人の眼から視られる.外にたいしてあかされる.同様に「私」の内面はまず「私」にたいしてあかされる.「私」だけが視るプライベートな空間,そこが「私」の内(内部,内界,内面)である.「私」という視点と境界との関係によって「内」と「外」とが、内面と外面とが定まる.
(「私」はまた外をみる視点でもあるが,外に位置づけられる他人の内面は見通すことができない)
では「私」という視点はどこに位置するのか.家の壁と住人とになぞらえてみよう.住人が壁の内面をみるとき,その住人は壁の内側にいる.「私」は内と外を隔てる壁の「内面」をみる側にいるわけだから,「私」は内/外の境界線の,その内側にいるのだ.

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……違和感がある.「私」が壁の内側にいるのであれば,私はどのようにして壁の「外面」をみるのだろうか.それは家の内に居ながらにして壁の外面をみるかのような、不可能なことに思われる.