「精神は骨である」にかかわる引用など

ひとつの自己意識がひとつの自己意識にたいして存在する.
そのありかたにおいて意識されるのが,精神とは何であるのかという経験である:
自らに対してあらわれる自己についての(自己としての)意識が,各々に独立しかつ統一されているようなありかた,すなわち「われわれなるわれと,われなるわれわれ Ich, das Wir, und Wir, das Ich ist 」についての経験である.

ヘーゲル精神現象学』B 自己意識

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ガルの骨相学:頭蓋骨の形態が脳神経系の生理を規定しその作用である精神のありかたを規定する.そして骨の形は〈自由意志〉では変更できない.
【ここで言及される「自然科学」は,べつに骨相学でなくてもよい.現代において変奏するならば「精神は骨である」は「精神は脳である」という表現になるだろう.】
そこにみられる「精神は骨である」という主張は,精神は骨(物)であると読める半面,精神(すなわち自己)が骨という対象となったすがたで眼の前にあらわれている,とも読める.
精神は骨であるというテーゼは,骨に精神という意義をあたえることで,あたらめて骨において精神をみいだしている.

ヘーゲル「精神現象学」入門 (有斐閣選書)