リウマチ研究

週末は整形外科の試験.これが終わると夏季休暇.

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整形外科の教材用の症例にかんする話し合いにおいて,鑑別疾患にリューマチが挙がったことがある.それにしてもリューマチとは,よく耳にする病気だけれどもはたして何なのだろう.とそうした折りに『膠原病・リウマチは治る』(ISBN:4166604643)という本をみかけたので購入.医学事典や内科学書のリウマチの項を,そのまま一冊の本にしたような本でした【概念,病因・病態,発症のメカニズム,共通する症状,疾患各論,検査,治療,という一連の流れで記されているあたり】.

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並行して『ヒステリー研究』(上(ISBN:4480088326),下(ISBN:4480088334))を読んでいると,たびたびリューマチの語が目についた.たとえば以下のような引用部分

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リウマチ

古くは,体のあちこちの運動器に疼痛が多発し,その痛みや炎症の症状が移動して(流れて)いくように感じられる状態をさしていった.リウマチ性疾患という用語は,このような移動性・多発性の運動器の疼痛を伴う疾患のほとんどすべてを含む.したがって,膠原病代謝性疾患,感染症などで,このような症状をもつ多くの疾患が含まれることになる.
 独立した疾患としてリウマチの名を疾患には慢性関節リウマチ rheumatoid arthritis(RA),リウマチ熱rheumatic fever(RF),リウマチ性多発筋肉痛 polymyalgia rheumatica(PR)がある.このうち慢性関節リウマチとリウマチ熱が俗にリウマチといわれ,とくに前者をさしていうことが多い.単にリウマチという場合には,症状名として使用しているのか,疾患名として使用しているのか,また疾患名として使用されている場合にはどの疾患をさすのかを明確にする必要がある.(世界大百科事典)

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リウマチは関節・筋肉がいたむ病気の総称であり,関節痛・筋肉痛の意味に使われる.リウマチは「流れる」を意味するラテン語のリューム(ないしロイマ:rheuma)に由来する:痛みの原因となるものが体内を流れていると考え,関節痛・筋肉通を呈する病気をリウマチズム rheumatism と呼んだ.
リウマチのなかには関節リウマチのみならず,痛風,変形性関節症,腰痛症,肩関節痛,膠原病・リウマチも含まれる.(『膠原病・リウマチは治る』p.16)

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関節リウマチ rheumatoid arthritis(RA):原因不明の多発性関節炎を主体とする慢性かつ進行性の炎症性疾患.関節滑膜に病変の主座があると考えられ,滑膜の増殖から次第に周囲の軟骨,骨が侵され,関節の破壊と変形に至ることが多い.多関節の腫脹と疼痛が特徴である.また関節以外の症状として,皮下結節,血管炎,皮膚潰瘍,肺線維症などの症状をきたすことがあることから,全身の疾患と考えられている.関節炎は寛解・再燃を繰り返すことが多いが,寛解が持続したり,急速に進行する例などもある.
関節リウマチは中年以降の40〜50歳の女性に多い.
関節炎:典型的には手足の末梢関節,とくに近位指節間関節(PIP),中手指関節(MCP)および手関節に対称的に関節炎がおこる.多発性で,関節破壊が進行すると運動制限,ひいては変形をきたす.
関節変形:手関節の変形では尺側偏位をきたす.手指の変形ではボタン穴変形や swan neck 変形をおこし,物を握ったりすることが不自由になる.
関節のこわばりは起床時にもっともつよくあらわれる(朝のこわばり)
リウマトイド結節:肘関節伸側,後頭部,仙骨部など圧力がくわわるところに皮下結節があらわれる.

膠原病

膠原病 collagen disease :1941年にクレンペラー P. Klemperer が提唱した疾患.
クレンペラーは全身の複数の臓器に同時に炎症を起こし,臓器の機能障害をひき起こす疾患にかんして,なぜ一つの臓器だけでなくて炎症が全身に広がったのかに着目し,病理学的検索により各臓器に共通する血管・結合組織に炎症が生じていることを見出した.そこでこれらの疾患の本態は結合組織の主要成分である膠質コラーゲンと血管の病理的変化である考え,"コラーゲン・血管病"としての膠原病の概念を提唱した.
そこでは全身性エリテマトーデス,慢性関節リウマチ,皮膚筋炎または多発筋炎,強皮症(全身性進行性硬化症),結節性動脈周囲炎,リウマチ熱の6疾患が代表的な膠原病とされた.
膠原病は,臨床的にはリウマチ性疾患に含まれる原因不明の慢性炎症性疾患であり,リウマチ性疾患のなかでも関節症状だけでなく,多臓器障害を示す.病因は自己免疫によるものと考えられ,膠原病には代表的な自己免疫疾患が含まれている.

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関節リウマチにかんしては上記(メモ「リウマチ」)
全身性エリテマトーデス(SLE:Systemic Lupus Erythematosus).発疹,発熱,関節炎,腎臓病(ループス腎炎に相当)などの多彩な全身症状をきたす疾患.おもに若い女性におこる.種々の自己抗体が出現する(いわば自己免疫病のプロトタイプ).
なおループス Lupus はラテン語で「狼」の意味.顔にできる発疹が狼に噛まれた傷痕に似ていることから.
10〜20%の人には躁・うつをはじめとする精神症状,けいれんなどの中枢神経症状がみられる(中枢神経ループス).失見当識などの意識障害を呈するケースでは急速に悪化し,生命にかかわることもある.これらの症状はときに他の症状が活発にあらわれたのち,遅れて出現することがある.予測は困難で,また躁・うつなどの気分症状は治療薬であるステロイドの副作用である可能性も考慮しなければならない.
強皮症:皮膚が硬くなる疾患
多発性筋炎 or 皮膚筋炎:筋肉・皮膚に炎症がおこる疾患
血管炎:血管に炎症がおこる疾患.

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